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2021.8.31
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平井商店

【滋賀の酒蔵を訪ねる①】[平井商店]/大津

日本一の湖・琵琶湖を中心に平野部が広がり、その周りの山々からの伏流水が今でも多くの酒蔵の仕込み水となっている滋賀。個性豊かな酒蔵と日本酒造りへの思いに注目する。第1回目は、商店街の老舗蔵、大津市にある[平井商店]。夫婦で醸す酒蔵をたずねた。

1. 夫婦のやさしさ滲む商店街の老舗蔵[平井商店]

琵琶湖の水運、東海道の宿場町、そして三井寺の門前町として栄えた大津。「大津百町」と称されたその賑わいの一部は、今やアーケードから明るい陽光が射し込む商店街となっている。そこに、勢いある文字で「浅茅生(あさぢを)」と書かれた酒樽が瓦屋根の軒のもとに積まれた店がある。

平井商店

ここ[平井商店]は、江戸時代初期、1658年に創業した老舗の酒蔵。「浅茅生」は、1677年に後水尾天皇の皇子、聖護院宮道寛親王から賜った和歌にちなんで名付けられた代表銘柄だ。「こっちは麹をつくる室(むろ)、こっちの部屋には、昔、杜氏さんや職人さんが冬の間住んでいたんです」と案内してくれたのは杜氏をつとめる平井弘子さん。時代を経るごとに増築したそうで、奥へ奥へと木造の建物が続く。

平井商店

太く長い梁が渡された薄暗い空間に、酒を造る大きなタンクが静かに並び、現在は使っていないが桜の木でできた大きな槽や、地中に埋め込まれた巨大な釡もそのまま残されている。ほんのりと漂う酒の香りが鼻をくすぐれば、この空気に満たされて[平井商店]が360年以上の時を刻んできた、その歴史の重みを感じるだろう。

平井商店

しかし、「迷路みたいでしょう」と笑う弘子さんにとっては、ここは生まれ育った場所でもある。今、酒造りに勤しむ酒蔵は、幼い頃にはかくれんぼをした懐かしい場所なのだ。家業を継ぐ気持ちはなく、大学で建築を学んでいた弘子さんが、酒造りの世界に入ったのは、十六代当主である祖父の急逝がきっかけだった。

2. 「祖父が守ってきたお酒。その想いを受け継ぎたいと思いました」と弘子さん。

大学卒業後に家業に入り、十七代当主の父に酒造りを学んだ。「やり始めると、どんどん楽しくなってきました。実は私自身はあまりお酒が強くないので、初心者にも飲めるような、飲みやすいお酒を造りたいと思っています」。そんな弘子さんを支えるのが夫・将太郎さん。根っからの日本酒好きで、酒造りに携わりたいと伏見で働いていた将太郎さんと出会い、結婚したのは7年前。今や、夫婦で酒を探求する日々だ。将太郎さんは「大変だけど、すべてを自分たちの手でできる充実感は大きいですよ。お酒ができる場に身を置いているという自覚を持って働いています」と目を輝かせる。情熱は高まる一方だ。

平井商店

取材に訪れた日には、夏にも美味しく日本酒を飲めるようにと20年ほど前に考案された「湖雪(フーシェ)」を搾っていた。細長い布製の酒袋に、弘子さんが醪(もろみ)を入れ、将太郎さんが袋の口を折って槽に重ねていく。しばらくすると槽にある口から、少しずつ日本酒が流れ出てきた。

3. 「ゆっくりしぼると、味がやさしくなると言われているんですよ」と将太郎さん。

手間ひまの掛かる作業だが、このひとときも酒を美味しくしてくれるとあれば、愛おしい時間となる。

平井商店

 近年増えてきたとは言え、まだまだ女性杜氏は少数派。そして360年の歴史を受け継ぐとなれば、気負ってしまいそうだが、見つめるのは過去ではなく”今“だけだと言う。
「私も継いでほしいと言われてきませんでしたし、子どもに継いでほしいかどうかも、あまり考えないようにしてるんです。ただ、もし次に繋げるなら、渡せるようにしておくことは私の仕事。そのために“今”できることをしていきたい」。目下、平井さん夫婦が考えているのは、いろいろなお米を使ってみること。「地元の味を大事にしたいので、滋賀県産のお米を中心に使っています。それに加えてほかの地域のお米も使って、自分たちが求める味のバリエーションを増やせたらいいなという想いもあるんです」。

左/平井弘子さん。大津市出身。「手に職を」と大学で建築を学んでいたが、祖父の急逝を機に家業に入 る。杜氏として父の教えを受け継ぐ。 右/平井将太郞さん。豊中市出身。日本酒好きで、酒造りに携わりたいと伏見で働いていた時に弘子さん と出会い結婚。二人三脚で酒造りに励む。

お米、気温、水、いろいろな条件に左右される酒造りを弘子さんは、「彼氏に尽くすような想いでお酒を造って、商品になったら今度は我が子を嫁にやるような気持ちになります」と表現した。
大切な家族とともに、大切な人に接するようにゆっくり醸す[平井商店]の酒。やさしい味わいの理由は、たっぷり注がれた夫婦の愛情だ。

4. 一度は飲みたい[平井商店]のお酒コレクション

平井商店の浅茅生 純米酒造り 三百三十年

浅茅生 純米酒造り 三百三十年 1210円。平井商店で最初につくられた純米酒。

「浅茅生 純米酒造り 三百三十年」1210円。平井商店で最初につくられた純米酒。

平井商店の浅茅生 純米活性にごり酒 湖雪

浅茅生 純米活性にごり酒 湖雪 1210円。夏にも飲めるように考案された爽やかな味わい。

平井商店の浅茅生 純米吟醸無濾過生原酒 熊蟄穴

滋賀県のお米「みずかがみ」で造った「浅茅生 純米吟醸無濾過生原酒 熊蟄穴(熊穴にこもる)」1485 円。

平井商店の浅茅生 吟吹雪 特別純米無濾過生原酒

浅茅生 吟吹雪 特別純米無濾過生原酒 1570円はしっかりした旨み。濃い味の肴と相性よし。

5. [平井商店]のお酒が買えるところ

■滋賀県
[小川酒店]077-524-2203/滋賀県大津市浜大津2丁目1ー31
[加藤酒店]077-522-4546/滋賀県大津市木下町13-1
[十四代酒のかなざわ]077ー562ー0038/滋賀県草津市追分8丁目16ー14
[ときわや酒店]077-572-8358/滋賀県大津市あかね町2ー12
[酒舗まえたに]0749-22-0575/滋賀県彦根市船町5-10
[大桝屋]0748-27-0014/滋賀県東近江市山上町447
[酒酎屋たきもと]077-581-0322/滋賀県守山市今宿2丁目11-18

■京都府
[西本酒店]075-221-0452/京都府京都市中京区姉小路通西洞院西入宮木町480

■大阪府
[ハタ酒店]072-632-4170/大阪府茨木市沢良宜西1ー18ー9
[いなごや酒店]06-6872-2612/大阪府豊中市新千里東町3-3-120-108
[イナキク酒店]06-6852-4453/大阪府豊中市中桜塚2ー27ー8 桜塚ショッピングセンター1F
[折口酒店]06-6641-1131/大阪府大阪市浪速区恵美須東2-10-14

平井商店

  • ひらいしょうてん
  • 滋賀県大津市中央1丁目2-33
  • 京阪「びわ湖浜大津」駅から徒歩5分
  • Tel.077ー522ー1277
  • 10:00~18:30
  • 不定休
  • 駐車場無
  • PHOTO/高見尊裕、TEXT/瓜生朋美
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