
京都・祇園に常設旅芝居劇場[祇園呉服座]が誕生。笑...
写真:Leaf KYOTO編集部/一部写真提供:松竹
坂東玉三郎が[南座]で上演する『特別公演』について、5月に大阪市内で取材会を行い、演目への想いや舞台づくりの哲学などを語った。
今回、『特別公演』で上演されるのは、『口上』『秋の色種(いろくさ)』『時雨西行(しぐれさいぎょう)』。『秋の色種』と『時雨西行』はいずれも長唄の名曲として知られるが、玉三郎は「曲として完成されすぎているがゆえに、なかなか舞踊にならなかった作品」と説明する。「『道成寺』や『藤娘』のように踊り継がれている作品は、曲が素晴らしいからこそ各時代の人たちに受け継がれてきた。今回の二作も、隙間のない曲、継ぎはぎができないくらい完結していて、非常に美しくできている」。その完成度の高さゆえに踊り手が自由に“間”を作りにくいという難しさがある一方で、「こんなにいい曲があるのに、なぜ振りがつかないのか」という問いが、長年の挑戦の原動力になってきたという。
『秋の色種』 ©松竹
『秋の色種』では、もともとの初演形式に立ち返り、弟子の坂東玉朗と坂東玉御とともに三人で勤める。「教えることが難しい時代なので、一緒に舞台に立つのが一番。衣裳を着るところや本番に向かうまでの時間のつくり方を、そばで見てもらうことが一番だと思っています。口でも言うし、教育もするし、教えるけれども、一緒の舞台に立つことが、一番早くて、熱い時間になると思っています」。女方が少なくなっている今の時代。言葉や指導だけでは伝わらないものを、キャリアを超えて同じ舞台で共有しながら受け継いでいく姿勢に、歌舞伎ならではの芸の継承を感じる。
1997年6月の歌舞伎座上演以来となる『時雨西行』では、振付も手がける花柳壽輔が相手役の西行法師を勤め、二人で作品をつくり上げる。修行僧が象に乗り普賢菩薩へと昇華していく幻想的な物語について、玉三郎は「表現としても、はっきりと視覚的にお見せした方が、若い方がご覧になっていても分かりやすいのではないか」と時代に合わせた演出に余念がない。日本舞踊や能の教養が時代とともに薄れる中、象に乗る演出など現代的な趣向も取り入れながら、作品の本質を今の観客に届く形へ磨き上げていく。その姿勢にも、玉三郎の美学がにじんでいた。
玉三郎にとって[南座]の舞踊会は、[歌舞伎座]では試しにくい演目や構成に挑んできた創造の実験場でもあった。改曲した『船弁慶』や『道成寺』の披露など、新たな表現を思い切って試せる場として長年親しんできたという。「[南座]ならではのものを上演することに意味があると、当時の支配人がおっしゃってくださって、舞踊会をさせてもらったことが、私にとって歌舞伎舞踊のための作品作りの場所であり、学びの場所になりました。それはとても大きいことだと思っています」。
自身が取り組む作品に対して、玉三郎が一貫して掲げるのは「幻想的で、非現実的な美しい時間をつくること」。映像配信が当たり前になった今だからこそ、「どうしても生で観たい」と劇場に足を運ぶ観客に向けて、そこでしか味わえない濃密な体験を届けたいという。「現地で実演し、観たいと思ってくださる方たちとしっかりと対峙していくことが大事だと思っています。その舞台の評判を見て、興味を持っていなかった人が足を劇場に向けてくださるものをつくることが、これから私がやるべきことだと思っています」。
2026年1月公演『南座 お正月お年玉-お話とシネマのひととき-』より 左:坂東玉三郎、右:片岡仁左衛門
また、『特別公演』に続き、[南座]では、2026年6月19日(金)〜21日(日)にかけて『片岡仁左衛門 坂東玉三郎 ―お話とシネマのひととき―』も開催する。今年1月の『南座初春特別公演』でも好評を博した、片岡仁左衛門との対談と、大スクリーンでの名舞台上映を組み合わせた贅沢な企画だ。「お正月ではいろいろと仁左衛門さんにお話していただき、お客様にも喜んでいただけました」と玉三郎が語るように、二人の間でしか生まれない掛け合いや、積み重ねてきた歳月を感じる対話が、毎回観客を惹きつけてやまない。
上映演目は日替わりで、いずれも仁左衛門と玉三郎の組み合わせでなければ観られない貴重な舞台映像が揃う。19日(金)は2018年に歌舞伎座で上演された『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』、20日(土)は1982年の歌舞伎座公演による『色彩間苅豆 かさね』、21日(日)は2005年上演の『与話情浮名横櫛 木更津海岸見染の場・源氏店の場』というラインナップ。なかでも『かさね』は、シネマ化もされていない記録映像で、30代の二人が力いっぱい踊る姿を大スクリーンで観ることができる。「このような機会でなければ観ていただけないものです」という言葉が示すとおり、この公演を逃せば次いつ観られるか分からない、一期一会の上映となる。
写真左から:木村竜蔵、坂東玉三郎、木村徹二
さらに、6月24日(水)・25日(木)には『坂東玉三郎・木村竜蔵・木村徹二コンサート』も開催。先月の新橋演舞場公演で好評を得たばかりの顔合わせを、今回は竜蔵と玉三郎、徹二と玉三郎のペアという趣向に変えて届ける。
6月の[南座]は、特別公演に対談、そしてコンサートまで、玉三郎の多彩な表現世界を、舞台・映像・音楽とさまざまな角度から味わえる、特別な月となりそうだ。
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