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写真:Leaf KYOTO編集部
[HOSOO]のフラッグシップストアに併設された[HOSOO GALLERY](京都府京都市中京区)で、新たな展覧会『Theaster Gates: Glorious Robe』が幕を開けた。コラボレーションの相手は、コンセプチュアル・フォーマリズム、彫刻、空間理論、ランドアート、パフォーマンスなど多様な領域を横断しながら実践を展開してきたシアスター・ゲイツ。京都の伝統工芸とブラック・カルチャーの歴史が交差する、極めて示唆的な試みだ。
本展は、2024年に東京・[森美術館]で開催された『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』を契機に深化した両者の協働から生まれた新作群を紹介するもの。陶芸、彫刻、建築的介入、都市開発に至るまで、多層的なアプローチで「失われゆくもの」に新たな価値を見出してきたゲイツと、1688年の創業以来、西陣織の革新を続けてきた[HOSOO]。その対話は、単なる素材や技術の融合にとどまらず、文化そのものの再解釈へと踏み込んでいる。
展示の核となるのは、「Dashikimono(ダシキモノ)」と名付けられた新たな衣服のかたち。西アフリカに起源を持ち、1960年代にはブラック・パワー運動の象徴ともなった「ダシキ」と、日本の「着物」という二つの衣服文化を横断するこの作品は、単なるデザインの融合ではない。民族や共同体の記憶を宿す衣服を媒介に、歴史とアイデンティティを再接続する試みといえる。
また、ゲイツの重要なモチーフである「Vessel(器)」も本展において大きな意味を持つ。器は物質的な容れ物であると同時に、精神や文化、集いの場を内包する存在として扱われる。茶入の仕覆のように織物で包んまれた作品は、衣服と器という二つの形態が重ね合わされることで、人間の営みや儀礼、共同体の記憶が「身体のメタファー」として立ち上がる構成となっている。
さらに注目すべきは、黒人解放運動の歴史を織り込んだ帯のシリーズ。マーティン・ルーサー・キング牧師、マルコムX、メドガー・エヴァーズといった指導者たちの記憶が、日本の伝統的な帯という形式の中に刻まれる。象徴的なフィストマーク(握りこぶし)と没年が織り込まれたこれらの作品は、追悼の意を超え、歴史の継承と再解釈を担うメディアとして機能し、帯として結んだ時に、日付がお太鼓部分に、フィストマークが前面に出るようにデザインされている。
この背景には、日本におけるマルコムX研究のアーカイヴが存在する。ジャーナリストの長田衛と石谷春日による資料収集と翻訳活動に触発されたゲイツは、「アーカイヴに新たな生命を吹き込む」という自身のテーマをさらに推し進めた。[HOSOO]が保有する約2万点の帯図案と結びつくことで、過去と現在、異なる文化圏の記憶が織物の中で交差する。
会場ではそのほか、陶芸作品を織物で覆った新作や、過去作の再制作に加え、朗読音源や津軽三味線とゴスペルの融合といった音のインスタレーションも展開。視覚芸術にとどまらない、身体的かつ多層的な体験へと来場者を導く。
『Theaster Gates: Glorious Robe』は、衣服や工芸を単なる装飾や技術としてではなく、社会や歴史に働きかける実践として再提示する展覧会。西陣織という日本の伝統とブラック・カルチャーの記憶が響き合う空間で、文化の継承とは何か、そして芸術はいかにして社会に作用しうるのかという問いを、自分自身の感覚でゆっくりと思い巡らせる時間になるはず。
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