
[京都鳩居堂(きゅうきょどう) ]で嗜むレターバイ...
京都の夏は、肌にまとわりつくような暑さが続く。石畳から立ちのぼる熱気、蝉の声、ゆるやかに揺れる暖簾。その暑さの中を歩きながら、ふと立ち寄りたくなる店がある。それが[大極殿 六角店 栖園](京都府京都市中京区)だ。
[大極殿 六角店 栖園]は、明治18年創業の老舗和菓子店[大極殿本舗]に併設された甘味処。
[大極殿本舗]は、南蛮菓子であるカステラを京都に広めた店としても知られ、和菓子文化に新しい風を吹き込んできた歴史を持つ。長い歳月を重ねた町家建築は、京都市の歴史的意匠建造物にも指定されており、店そのものが京都の文化を今に伝える存在となっている。
町家を活かした店構えは、外の喧騒をやさしく遮り、一歩足を踏み入れるだけで空気が変わる。店内には磨かれた木の机と静かな坪庭があり、観光客で賑わう京都の中心にありながら、不思議と時間がゆっくり流れている感覚を覚える。席に座り、庭を眺めていると、急いで歩いてきた気持ちまで静まっていく。
この店を訪れる人の多くが目当てにするのは、季節ごとに変わるかき氷や琥珀流しだ。月ごとに蜜や素材が変わり、梅、檸檬、宇治金時、柚子など、その時期ならではの味が用意される。
今回いただいたのは、珍しい“赤紫蘇味”のかき氷。
ひと口目に広がるのは、赤紫蘇ならではの爽やかな香りと、ほのかな酸味。そして後からやさしい甘みが追いかけてくる。氷の冷たさとともに後味がすっと抜けていき、まるで夏の暑さを静かに和らげてくれるような味わいだった。蜜の加減が絶妙で、赤紫蘇特有の風味を上品に引き立てながらも、決して強すぎない。他ではなかなか出合えない、京都らしい品のある一杯だった。
華やかさを競うような現代のかき氷とは違い、ここで味わえるのはどこか素朴で、和菓子店ならではの繊細な甘さ。口に運ぶたび、暑さで火照った身体がゆっくりほどけていく。
素材の風味を静かに引き立てる味わいには、長く和菓子を作り続けてきた店の歴史が感じられる。
そして、この店の魅力をさらに深くしているのが、女将さんをはじめとする人々の穏やかな接客だ。
丁寧だけれど構えすぎず、初めて訪れてもどこか懐かしい気持ちになる。その空気に触れていると、京都という街が持つ「おもてなし」は、派手さではなく、相手を静かに心地よくさせることなのだと感じる。
暑い京都で味わう一杯の涼。それは単なる冷たい甘味ではなく、季節を楽しみ、歴史に触れ、時間をゆっくり味わうための小さな贅沢なのかもしれない。
※かき氷の提供は9月末ごろまでを予定
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