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京都・紫野の静かな一角に佇む[今宮神社](京都府京都市北区)。
その参道に足を踏み入れると、ふわりと漂う香ばしい香りが訪れる人をやさしく迎えてくれる。
この香りの正体こそ、[今宮神社]の名物「あぶり餅」。
そしてその味を守り続けているのが、参道を挟んで向かい合う二軒の老舗、[あぶり餅一和]と[あぶり餅 本家 根元 かざりや]である。
[一和]は平安時代・長保2(1000)年創業と伝えられ、日本最古の和菓子店とも言われる存在。
一方の[かざりや]は、江戸初期・1600年頃創業で「本家」を名乗る格式ある店だ。
どちらも長い歴史の中で「あぶり餅」という素朴ながら奥深い味を守り続け、参拝客や観光客の舌を楽しませてきた。
参道に入ると、まず威勢の良い呼び込みの声が左右から響き、どちらに入るか嬉しい悩みを抱えることになる。
[かざりや]のあぶり餅
最初に足を運んだのは[かざりや]。畳敷きの広間に通されると、どこか懐かしい空気に包まれる。
まるで田舎の祖父母の家に帰ってきたような、ほっとする感覚だ。
お茶で喉を潤しながら待っていると、やがて運ばれてくるあぶり餅。
炭火で軽く炙られた餅に、白味噌ベースの甘じょっぱいタレが絡み、その香ばしさと優しい甘みが口いっぱいに広がる。気づけば食べる手が止まらず、あっという間に完食してしまう。
[一和]のあぶり餅
その後、[今宮神社]を参拝し、新緑の中をゆったりと散策。
心も体も整えたところで、今度は[一和]へ向かった。
同じあぶり餅でも、店が変わると微妙に異なる味わいが楽しめるのが面白い。
散策で少し汗ばんだ体を、扇風機の風や窓から吹き抜ける自然の風で冷ましながら、再びあぶり餅を待つ時間もまた贅沢だ。
運ばれてきた餅はやはり絶品で、先ほどとは違う、より香ばしい風味や余韻を味わうことができる。
この「あぶり餅」は1人前が11本で提供されるが、これには意味がある。
陰陽道では奇数は「陽」、つまり縁起の良い数字とされており、厄除けや無病息災の願いが込められているのだ。
平安時代から続く門前菓子として、人々の祈りとともに受け継がれてきた背景を知ると、その一口一口がより特別なものに感じられる。
ただ美味しいだけでなく、歴史や信仰、そして人々の想いが詰まったあぶり餅。
[今宮神社]の参道で味わうひとときは、五感すべてで楽しむ京都らしい体験と言えるだろう。
どちらの店に入っても、あるいは両方を食べ比べても、それぞれの魅力が心に残る。
香ばしい香りに誘われて歩く参道は、まさに小さな時間旅行のようなひとときである。
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