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2020.1.1
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令和の子年、京都・大豊神社で出合う狛ねずみの御利益

いよいよ「子年」がスタートした。十二支の先頭にあたる「子(ねずみ)」は、新しい生命が生まれる様子を象徴しているという。古来より、繁殖が盛んで多産の鼠は子孫繁栄をあらわし、ネズミ=寝ず身(ねずみ)に通じることから働き者で、財を蓄えるシンボルとされてきた。

また、平安時代の文学『源氏物語』には、「子の日」は長寿を祝う日という記述がみえる。子宝、繁栄、財を蓄え、そして長寿……。そんな縁起物尽くしの「ねずみ」に出合える場所が、京都にあった。左京区鹿ヶ谷にある古社・大豊神社だ。

社伝によると、背後の東山三十六峰の十五峰目「椿ヶ峰」をご神体とした山霊崇拝の社だったが、仁和3(887)年、宇多天皇の御悩平癒祈願のため、尚侍(ないしのかみ)の藤原淑子が勅命を奉じ、医薬祖神である少彦名命(すくなひこなのみこと)を椿ヶ峰に祀って創建した勅願社とのこと。少彦名命のほか、学問の神様の菅原道真、勝運の神である応神天皇も御祭神として祀られている。

住宅街を一路東へ、坂道を上って哲学の道を少し東へ入り、境内へとお邪魔した。


大豊神社

椿ヶ峰の樹林に抱かれて境内がある。冬の早朝、境内は深閑として、清々しい。正面奥の石段を上った先にある本殿へ参拝し、今回の目的である末社・大国社(祭神・大国主命)へ。


狛鼠のある大国社へ

境内の右奥の石段を上がると、大国社がある。社の前では狛犬ならぬ阿吽の「狛(こま)ねずみ」が出迎えてくれる。

大国社がなぜ狛ねずみかというと、『古事記』の神話、鼠が野火の中から大国主命を洞穴に導いて救ったことに基づいている。表情豊かな二座の狛鼠はそれぞれ何かを手にしている。それが何なのか知りたくて、社の権宮司の方に尋ねると、「右側の狛鼠は学問をあらわす巻物、左側は豊穣と薬効を象徴し、また生命の源である水の玉を抱えています」とのこと。


(写真右)阿の狛鼠。巻物を抱える
(写真左)吽の狛鼠。水玉を抱える

水玉を持つ左の狛ねずみは子授け・安産をあらわしており、生まれた子どもが元気に育ち、右側の狛鼠に象徴されるように学問を学んで成長して大人になって次の生命を育んでいく。二座の狛鼠は生命、人間界のサイクルを現していると教えていただいた。

水玉を抱える狛鼠の頭や台座には椿の花が飾られていた。背後の霊峰・椿ヶ峰に抱かれた境内は椿の木が多く、「椿の名所」としても知られている。また、本殿前には古木・枝垂れ梅があり、約50年に一度、梅と桜が同時に咲く時期があるそうだ。

ところで、境内には狛ねずみ以外にも見所がいっぱいだ。末社の美田稲荷社は商売繁盛の神で狛狐が、火難除の愛宕社には狛鳶(とび)が! 災難除の日吉社では狛猿が鎮座する。治病・健康・長寿と金運を現す狛蛇も! こちらには別の機会にゆっくり会いに来たいと思う。

さまざまな神様とヒヨドリの鳴き声、霊峰から流れてくる水音にすっかり身も心も癒されながら、令和の子年の少子化社会に子授け・安産を、私たちは学業成就(筆力が増しますように!)を願って、境内を後にした。


今回、境内をご案内いただいた権宮司さんと狛鼠

 

京都の摩訶異探訪とは

京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。

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