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2019.12.16
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京の大天狗・愛宕山太郎坊と天狗の正体

京都の霊山といえばまず、東の比叡山、西の愛宕山だろう。西の霊山「愛宕山」は日本一の火伏の神様が鎮座する山としてよく知られるが、実はもう一つ、すごい天狗の首領がいる山でもあった。


愛宕山登山道(清滝より)

日本の8大天狗といえば、1番・京都愛宕山太郎坊(栄術太郎)、2番に滋賀比良山次郎坊、3番・京都鞍馬山僧正坊、4番・長野飯縄山三郎坊、5番・鳥取大仙伯耆坊、6番・福岡彦山豊前坊、7番・奈良大峰山普鬼坊、8番・香川白峰山相模坊をいう。愛宕山太郎坊はその筆頭で、神通力は天地をもひっくり返すと言われるほどのパワーを持つとされる。

愛宕山の古縁起や平安時代の説話集『今昔物語』によれば、山岳密教の開祖役行者と奈良時代の修行僧・雲遍上人が愛宕山を開山し、そこを行場に秘術を駆使して懸命に祈祷をしていると、そばの大杉に天竺(インド)から来た大天狗の日羅(ニチラ)や中国の天狗の首領であった是界(ゼカイ)とともに太郎坊が出現。その数、大小合わせて9億余り、愛宕山は天狗でびっしり埋め尽くされたと伝わる。

その場所が愛宕山表参道を登って十七丁目の四所明神(火燧権)で、太郎坊が姿を現した大杉が愛宕の山神の神籬(ヒモロギ)として現存している。


火燧権現跡(十七丁目)

半空洞化した巨幹は落雷によって炭化した焼痕を残すものの、様々な祈祷の札や石柱や祠によって守られていて、霊力の確かさを今に伝えている。愛宕山を登る人たちはまず、この大杉に礼拝し、その霊力に護られながら頂上を目指す。

さて、その天狗という異形の者の正体が気になる。

そもそも太郎坊を首領に頂く天狗は大陸より仏教の伝来とほぼ時を同じくして来日した。ルーツの中国やインドでは、夜空にフッと現れて長い尾をひき、天を走りぬける流れ星(隕石の飛来)や彗星のことを指し、その姿が野を駆けるキツネや犬に似ていることから「天のキツネ」「天の犬」と例えて「天の狗(いぬ)」と字をあてたのが始まりとされている。

しかも変幻自在、人々の意表をついて出現し、隕石となって地上や海上に落下した時の破壊力は凄まじい。とうてい人智の及ぶモノではない。人々が天狗を妖魔、大魔王と畏怖したのもうなずけるし、一説に天狗の顔が赤いのも、その流星が火の玉となって飛翔する色であり、あの長い鼻は火球の尾をあらわしたものだとも聞く。


雪の中の鞍馬駅前の天狗

そうしてその後、日本へ上陸した天狗は峻険な山にすみ、我が国独自の進化の過程を経て今に至る。

その進化の一つが、先に記したあの天狗の顔と姿。修験者姿に赤い顔とこれでもかと突き出た高く大きな赤い鼻だが、これはかなり進化を経た日本独自の容貌で、渡来当初はワシやタカ、トンビ、カラスなどの猛禽類やキツネや犬、ムササビのような顔と大きな両翼を付けた姿だった。


渡来当初の天狗は今とは違った印象。
国会図書館デジタルコレクション所蔵『荒山水天狗鼻祖 3巻』より

ちなみに、かの鞍馬山で牛若丸の剣術修行の相手をした小天狗たちの正体は、なんと鞍馬山に今もその子孫たちが棲む、ムササビ説が有力だそうだ。


国会図書館デジタルコレクション所蔵『古大津絵集 五月庵蔵版. 第2』より伝わる天狗の姿

京都の摩訶異探訪とは

京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。

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