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2018.12.18
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顔見世の「まねき」で福を呼ぶ、師走の京都の風物詩

今や師走の古都の風物詩となっている南座の顔見世興行。冬枯れの街をひときわ華やかに彩るこの顔見世は、実は縁起物づくしだった。


正面からみた南座

毎年、12月に南座で顔見世が行われるのは、江戸時代、歌舞伎の1年が旧暦の11月から翌年の10月までだったことに由来する。役者の契約が10月末で切れたため、11月が歌舞伎の正月にあたり、「これからの1年は、この顔ぶれでやっていきますよ」と舞台で新しい座組が披露された。これが顔見世である。


顔見世の演目

この古式が現在も受け継がれているのは、全国で京都の四条河原町の南座だけだという。今年、南座は発祥400年を迎えた。約2年におよぶ耐震改修を終え、新開場となったこともあわせて、通常12月だけの顔見世も今年にかぎっては11月から2ヶ月にわたって興行され、おおいに賑わいを見せている。

 

この顔見世興行に欠かせない縁起物の代表が「まねき」(招き看板)である。


師走の風物詩「まねき」

厚さ約3㎝、長さ約1.8m、幅約30.3㎝のヒノキの板に、江戸時代から使用されてきた勘亭流という芝居用の書体で、出演する役者の名前が書かれている、独特の太く隙間のない文字には、「隙間なくぎっしりお客様が入りますように」との願いが込められ、公演の成功を祈って掲げられる。

まねきの文字には、お清めと艶出しのために、お米で作った清酒を入れてすった墨が使われる。よく見ると、まねきの板の上の部分が、「入」のような形になっている。これもまた、お客様がたくさん入りますように、ということらしい。南座の正面にずらりと掲げられたまねきを見上げるのは、壮観だ。向かって右側が関西勢、左側が関東勢だと聞いた。


南座とまねき

また、南座の屋根の上にはシンボルでもあり、興行のしるしともいえる櫓(やぐら)がある。その正面に、白い御幣「梵天」が2本立てられている。これは劇場に神を招くための「神の依り代」で、毎年、顔見世の度に新たに作り替えられる。梵天が、無事に興行できるよう常に見守ってくれている。


屋根の上の梵天

ところで、花街の舞妓さんたちが髪にさすかんざしは毎月、モチーフが違っている。12月は「まねき」と呼ばれ、顔見世にちなんで、かんざしの飾りの中に小さいまねきを模したものが付いている。何も書かれていない小さなまねきに、実際、役者の方にサインを入れてもらうとのこと。なんとも華やかで、粋な計らいだ。

何かと忙しないこの時期。一度くらいは顔見世興行を楽しみたいと思いつつ、今年もそんな余裕すらなく1年が終ってしまいそうだ。せめて2018年の締めくくりに南座の前に立ち、人々の願いが込められた「まねき」を見上げながら、400年の伝統と歴史に思いを馳せてみようと思う。

京都の摩訶異探訪とは

京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。

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