宇治川に架かる最恐の橋と橋姫詣で

古来より、橋は村はずれに位置し、あの世とこの世を繋ぐ結界であり、異界の場所だとされてきた。京都で異界の橋と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、安倍晴明ゆかりの一条戻橋だろう。

橋はあの世とこの世の境界

平安京の都市伝説「一条戻橋」と安倍晴明

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では、最恐の橋というと、どこだろう?

恐ろしくも悲しい伝説に彩られた、宇治川に架かる宇治橋を挙げたい。かつて宇治橋には、その守護神として、三ノ間の張り出し部分に「橋姫」が祀られていた。

 

約100年前の宇治橋(筆者所蔵)

 

現在の宇治橋の三の間。三の間とは、橋の西詰から三つ目の柱間に設けられた上流側に張り出した部分のことをいう。

言い伝えによると橋姫は、もとは公卿の娘で容姿は美しいが、とても嫉妬深い人だった。その娘と恋仲になった男がいたが、そのうち男は別の女に心を移してしまう。嫉妬に狂った娘は、男と相手の女を取り殺すために生きながら鬼になることを決意する。貴船神社の奥の宮に七日の間、丑の刻参りをし、宇治川の浅瀬に七日七夜の間、水に浸かって望み通り鬼と化す。鬼となった娘は裏切った男を殺し、相手の女とその親族を皆殺しにした。それだけではあきたらず、妬ましく思う男女を次々と殺していく。その姿は次のようだったという。

黒髪を五本に分けて頭にツノをつくり、顔には朱、身体には丹を塗り、頭上に火を灯した三本足の鉄輪を乗せ、口に松明を加えた。その姿で宇治橋へと疾走する娘を目にしたものは、恐ろしさのあまり気を失ったり、絶命したりしたという。娘の凄まじい執念に、地元の人々はその霊を鎮めるため、宇治橋の中ほどに社をつくり、橋姫として祀った。

昭和に入っても、宇治橋を渡るだけで橋姫が嫉妬して男女の中が壊れてしまうと怖れられ、地元の人は婚礼時や結婚を間近に控えた男女は橋を避け、わざわざ遠回りをしたそうである。

はじめに宇治橋の中ほどの三ノ間に祀られた橋姫神社は近世になって宇治橋西詰北上林味卜邸の横に移された。その後、明治3年の洪水で流失、現在は宇治蓮華の地に祀られる。境内では瀬織津比咩尊(橋姫)を祭神として、水運の神である住吉明神と並んで祀られる。

 


橋姫神社


橋姫神社の扁額

そして、この橋姫伝説がもととなり、あの名高い謡曲「鉄輪(かなわ)」が誕生した。また、最初に橋姫を橋のたもとに祀ったのは、橋を渡って土地に侵入する魔や疫病、外的を払い、地元の人たちが橋を渡って出て行く際は災難から守ってくれるという願いが込められていたようである。「橋」はあちらとこちらの境界、つまり境であるからこそ、その端に祀ったといわれ、「橋姫」は「端(はし)姫」であったとも言われている。

この橋姫伝説はその後さまざまに変化していく。今では「最強の悪縁切りの神様」、「川のケガレを流す神様」として信仰されている。夫や妻、恋人の浮気相手との縁をバッサリ切ってくれるともいわれ、小さい社だけれども、橋姫詣でに訪れる人も少なくないようだ。


宇治川


現在の宇治橋。橋のたもとに紫式部の像がある

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