
8月31日(月)までの限定販売
北野天満宮大鳥居と狛犬。
右は京都市最大といわれる大鳥居脇の「阿」獅子

北野天満宮の角のある狛犬と獅子
ところで、狛犬のルーツはライオンにあると言われている。古代オリエントでは、群れをなして獲物を狩り、時には人をも襲うライオンを猛獣として恐れていた。その一方で、耕作の豊穣を根こそぎ奪う草食獣を退治してくれる神獣として、また豊穣と多産をもたらす地母神として崇めてもいたという。
以前、京都市動物園でライオンを飼育されている方から、昔はライオンの生息地は広範囲に及んでいたと伺った。大型のライオンはアフリカ北部からエジプト、チュニジアやアルジェリア、モロッコなどの地中海側にまで豊富にいた。だが、その地域のライオンは20世紀初頭に絶滅した。インドライオンはインド、イスラエル、イランやイラクにも生息していたという。

京都市動物園の前身である、京都市紀念動物園の古絵葉書
日本初!ライオンの人工保育に成功した(筆者所蔵)
鉄器を作り出したことで知られる古代ヒッタイトでは、ライオンは王城や門を守る獣神とされ、重要な門には一対の像が置かれていた。こういったライオンの情報や文化がやがてインド、中国を経て日本に伝わり、日本固有の文化と融合して伝統芸能の獅子舞が生み出され、獅子・狛犬になったとされている。また、角を持つ狛犬の姿は、インドに生息するサイがライオンと融合したともいうが。

北野天満宮の狛犬(角がある)
2頭の狛犬の片方「獅子」といえば、正月の縁起物の一つである獅子舞が頭に浮かぶ。最近こそ、市内ではあまり見かけなくなったが、伊勢大神楽は祓い浄めの強力な霊力を持つとされ、街を巡ってくると、「お獅子に頭を噛んでもらうと賢くなる」「痛いところがやわらぐ」と言って、大人たちは怖がる子どもたちをなだめ、頭を噛ませていた。知恵を授けてくれる文殊菩薩は獅子に乗った姿で表現されることから、その信仰も加わって、獅子舞に頭を噛ませるという風習が生まれたのだろう。他にも沖縄のシーサーは、ライオンを示すサンスクリット語が転訛したもので、村や家の災い除けとして知られている。
さて、京都の神社には逆立ちをした姿など、個性的な狛犬がたくさん鎮座している。正確には狛犬ではないが、北野天満宮の牛をはじめ、伏見稲荷大社の狐、護王神社の猪、岡崎神社の兎、大豊神社の鼠など、それぞれ神社とかかわりのある神獣がいて、さまざまな言われやご利益があるので、巡ってみるのも楽しい。
境内の紅葉を楽しむとともに、古今、人々から信仰され、親しまれてきた霊獣たちに出会い、その霊力に触れ、年末にかけての忙しない日々を厄除けで過ごしたいものだ。

伏見稲荷大社 第一鳥居前の狐

護王神社のイノシシ

岡崎神社の兎

(左)大豊神社境内にある大国社のねずみ「阿」
(右)宗像神社の逆立ちの「阿」
京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。