
「持たざるものの闘い」をテーマにした『第16回京都...
(左から)李相日監督、森七菜、渡辺謙、横浜流星、吉沢亮、高畑充希、寺島しのぶ、見上愛、田中泯
2025年6月6日(金)に全国公開される映画『国宝』のジャパンプレミアが、京都・真言宗総本山 教王護国寺(東寺)の金堂にて5月30日(金)に行われた。監督の李相日と、出演者の吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、見上愛、田中泯、渡辺謙が登壇し、抽選に当選した観客に、映画への思いや第78回カンヌ国際映画祭に参加した感想、京都での撮影について語った。
李相日監督はまず最初に「この映画は主に関西圏で撮影し、我々も京都を拠点に生活をしながら数ヶ月撮影を行ってきました。京都ではたくさんの方にご協力いただいたおかげで映画が完成することができたので、この場で感謝の気持ちを伝えることができて、本当に嬉しく思っております。日本の伝統芸能をベースにしたエンターテイメント性が高い作品なので、カンヌの地でどのような評価を得るのかは、楽しみな反面、不安も大きかったんですが、観終わった後のスタンディングオベーションもそうだし、映画を観ている間、皆さんが集中してくださっている空気感がビンビンと伝わってきて、我々が作ったものが、込めたものが、しっかり届いていると実感して本当に胸が熱くなりました。」と挨拶。
吉沢は「カンヌの地に行けただけでも役者としては本当に幸せなことでしたが、忘れられない景色を見ることができましたし、作品がしっかりと観てくださった方の心に届いた景色を見られたので、すごく幸せでした。ほんの少しの手応えと自信も感じたので、早く日本の皆様に見ていただきたい。撮影期間も含めて1年半、歌舞伎と向き合いながらの撮影でした。1つの役の準備にここまで時間をかけるのは初めての経験だったので、僕自身もどんな体験をするのか未知数でした。ものすごく大きな不安を抱えながら、でも何かこの作品が、”集大成”、”僕の代表作”になってほしいという思いをのせた撮影だったので、かなりの覚悟は持っていましたし、その分すごく苦しみもしました。」と心の内を明かしてくれた。
撮影現場でのことについて、高畑は「エキストラの皆さんと一緒に客席で見させていただく撮影が多かったので、ただのファンのように見ていました。歌舞伎や舞台は、ヒキの世界で、空気で、受け取るものが多いと思うんですけど、映画になると圧倒的にすごいヨリの強さがありました。吉沢さんのヨリのカットが、もうあまりに美しくて!(笑)。」と吉沢をベタ褒め。
寺島は「私は歌舞伎の世界の生まれですから、”大垣幸子”として存在しつつ、自分が今まで生きてきた歌舞伎の世界のエッセンスが、どこか私が存在することで、この映画に少しだけでもリアリティが出ればいい。そういう役割なんじゃないか。そのために李さんは、私を呼んでくださったのかなと感じておりました。でも、もうとにかく子役の2人も含めて、パフォーマンスを演じる方たちを撮影する量がすごいんです!私たちは観客として応援するしかなかったから、途中でタオルを投げて、『もうギブです!』って言いたいぐらい本当に頑張った。だから今、先に映画を観てくださった方たちの評判がいいと嬉しくてウキウキしてます(笑)。」と、李相日監督の撮影量に驚きながら、ハードな撮影を乗り越えた出演者たちを賞賛した。
田中は「とにかく桁外れの門外漢で、やってはいけないことかもしれないとドキドキするような、そういう仕事を何ヶ月間もやってきまして、いまだに僕の中では終わった気がしていない。いわゆる伝統と呼ばれている芸術に、僕はずっとこの80歳になるまで触れてきてないんです。僕は生活の中にそういうものは全部あるだろうと思い込んで、自分に言い聞かせて、そして『前へ行こう』と生きてきた人間なんです。だから、どのくらいショックが大きかったかご想像できると思います。主演の2人のあの努力はもう壮絶です。壮絶な努力をなさってくださっています。本当にこれは伝統のためにもきっとなると思います。彼ら2人の体を伝統が侵食した。これは大事件だと僕は思っています。」と、感慨深げにコメント。
京都での撮影について問われると、横浜は「もう本当にただただ作品と向き合って”俊介”として生きていた日々だったので、撮影で”出し切って”、帰って”反省”を繰り返していました。ですから外に出る暇はありませんでした(笑)。」と、残念な様子ながら、作品に実直に向き合った日々を明かした。
渡辺は「舞台の撮影時は、200人ぐらいのエキストラの方が参加してくださったんです。自分たちは映らない時でも座って拍手をしてくれたり、応援して掛け声をかけてくれたり、そういうのを一日中お付き合いいただいたんですよ。本当にもう胸が熱くなりました。映画の最後に踊るのですが、そこはすごいセット!美術監督・種田陽平、会心のセットなんですが、なぜかというと”せり”があるんですね。京都の撮影所は床が土なんですが、土を掘って、そこにエレベーターをつけて”せり”を出したんですよ!もうね、セットを見ただけで感心しました。これは京都ならではです。素晴らしかった。」と、会場に来ていた種田陽平氏を紹介。会場全体から温かい拍手が送られた。
森は「吉沢さんと横浜さんの2人の撮影の時に見に行かせていただきましたが、本当に細かなところまで素晴らしかったです。今日は初めて京都に来たんですけど、あのセットを見てからだと、京都の街並みにすごく興味が湧いてきて、ああ、こんな素晴らしい街で撮られた映画がこれから公開されるんだと思っています。」と喉の調子が悪いながらも一生懸命コメント。
見上も「ほとんど京都で自分のシーンは撮っていましたが、今回、場所の持つパワーみたいなものをすごく感じた現場でした。今まで屋内だったら、東京のセットでもそんなに変わらないだろうって正直思っているところもあったんですけど、実際にお茶屋さんのシーンなどを京都で撮影していくと、床や壁など、そういうところにじみ出る、いろんな人のにおいとか、歴史みたいなものが、街にも建物にもすごく漂っているのが京都だなと思って、そういう部分に助けられた撮影だったなと思います。」と、笑顔を見せた。
最後に、監督は「撮影が3ヶ月間というのは、一番周知されていますが、原作の吉田修一さんから始まって、脚本に数年掛かって、撮影準備を経て、そのすべての濃密なエッセンスが撮影の3ヶ月間に凝縮されて、さらにその後、編集、音楽、CGまで、今回は今までの作品より倍以上の時間が掛かっています。先ほど美術監督の種田さんをご紹介しましたけど、もう1人、京都が生んだ偉大な音楽家・原摩利彦さん。カンヌの劇場のエンジニアも、サウンドトラックが素晴らしかったと言ってくれたぐらいです。彼とは『流浪の月』からで、今回も引き続きお願いしたんですけど、音楽作りもこの京都で合宿を何度も行っています。さきほど僕の撮影量がひどいってお話をさんざんされてましたけど(笑)、実は音楽作りも似たようなものでして、大変なことを散々ずっとやっていました。追い込みながら、追い込みながら曲を作っていただいたのが本当に素晴らしい。ですので皆さん、映画を浴びてください!カンヌで感じたあの観客席のあの沸騰のように。日本の観客の皆さんにも、またあの特別な映画体験をしていただければ、本当にこれ以上嬉しいことはありません。」と締め括った。
吉沢も「いろんな方に絶賛していただいていて、これから観る皆さまの中のハードルが上がっているというか、すごく期待値の高い作品になっているんじゃないかなと思います。でも確実にその期待は超えていく作品になっていると思います。本当に極上のエンターテインメント作品を皆さまにお届けできると確信しています。」と最後に作品への自信を伝えた。
© 吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会
吉田修一の同名小説を原作とした映画『国宝』。任侠の一門に生まれた主人公・立花喜久雄が父親を亡くしたことで、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道を歩んでいく50年を描く。京都をメインに撮影されたこの映画、馴染みのある風景も楽しみながらぜひ大スクリーンで、感動を味わって。
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