
京都は盆地であることから、夏の暑さの厳しい土地柄です。京町家では、夏を迎える準備として、襖や障子を外して御簾や葦戸など通気性の高い建具に替え、直射日光がそそぐ2階開口部には簾を垂らします。
京都の美しい景観、四季折々の自然と茶道や華道などの歴史に培われた生活文化、洗練された精神文化の象徴であり、京都・日本・世界の宝ともいえる「京町家」。街中でもその美しい姿を活かしたレストランやカフェ、雑貨屋などが点在し、身近にふれる機会も多いのでは?しかし、身近にありながら、「京町家ってどんな建物?」と聞かれたときに、答えられない人も多いはず。まずは、その特徴を知ることからはじめてみよう。
昭和25年以前に建築された木造建築物で、伝統的な構造及び都市生活の中から生み出された形態や意匠を有するものと定義される「京町家」は、外観・内観に様々な特徴があります。
通りに向かって設けられた軒。通りの公的な空間と内側の私的な空間をつなぐ半公共的な空間として、多様に使われています。
道行く人からは内側は見えにくく、家人からは外の様子が良く見えるようにできており、柔らかい防犯装置としての機能を持っている京格子。商売の種類などによって、糸屋格子や麩屋格子、酒屋格子、炭屋格子など様々なバリエーションがあります。
表に面した二階が低くなっている厨子二階(つしにかい)」に多く見られる意匠で、堅格子を土で塗り込めたもの。防火のためであると同時に道行く人を見下ろさない配慮とも言われています。
昭和初期の京町家によく見られます。石やタイルを貼った腰壁上部に、真鍮製や鉄製の格子がはめられたものです。
京町家の表から裏へ続く細長い土間の通路。この通り庭は単に通路としての役割だけでなく、採光や通風を確保したり、通りからの来訪者とのコミュニケーションの場としての機能を持っています。
通り庭上部の吹き抜け空間は、炊事に伴う火の粉を処理するため、吹き抜けとなっており、「火袋」と呼んでいます。木造の軸組構造の意匠が伸びやかで美しく、繋ぎ梁の架構は職人の技を競い合う場でもありました。
四方を建物や塀で囲まれた小さな中庭。間口が狭く奥行きが長い町家にあっても、通風・採光を確保することができます。自然を取り込み、採光と通風を確保するとともに、火災時の延焼防止帯にもなっています。
京都は盆地であることから、夏の暑さの厳しい土地柄です。京町家では、夏を迎える準備として、襖や障子を外して御簾や葦戸など通気性の高い建具に替え、直射日光がそそぐ2階開口部には簾を垂らします。
床の間には見た目に涼やかなしつらいを工夫し、軒先に吊るした風鈴の涼しげな音に耳を傾ける、打ち水をして自然の力で風を通すなど、季節に応じて快適に過ごすための工夫が、暮らしに溶け込んでいます。
また、坪庭など、ほんの小さな空間を生かし、風や光、植栽の変化など、自然を暮らしに取り込む工夫がされています。
近年、このような京町家の良さが見直され、京町家に住みたい、京町家で商売してみたいといった需要が高まっています。 一方で、保全・継承について検討することなく、取壊しされる京町家が少なくありません。 京都市内における京町家の数は、年間約2%、7年間で5602軒が減少しています。
このような実態の中、京都市では、この貴重な財産である京町家を未来へ継承していくため、多様な主体との恊働の下に京町家の保全及び継承を推進していくことを目指し、「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」(京町家条例)が2018年11月に制定されました。 京都の町並み、歴史・文化の象徴である京町家。京都の魅力あるまちづくりの資源であり、京都市民にとって貴重な財産であるとともに、京都だけでなく、日本の、そして世界の宝として、50 年後、100 年後の未来に継承していくことが、現代に生きる私たちの使命となってくるのです。
条例が制定されたことをきっかけに、京町家の総合的なサイトが完成しました。京町家について、様々な悩みや相談を解決してくれたり、京町家を活用している方の実体験など、今まで知らなかった情報が満載です。
※こちらのページは「京都市都市計画局 まち再生創造推進室」のスポンサーのもと、公開しております。
※当サイトに記載の内容は2018年5月時点のものとなります。そのため、予告なく記載されている事項が変更されることがありますので、予めご了承ください。