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2017.12.15
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煩悩と鬼門封じの「除夜の鐘」

今年もあとわずかで一年が終わろうとしている。12月31日の大晦日、新年を迎えるのに欠かせない風物詩がある。除夜の鐘だ。あちこちの寺院では鐘が撞かれる。その音色は、しん、と静まった古都の夜をふるわせる。

なかでも有名なのが、東山区にある浄土宗総本山知恩院の除夜の鐘だ。テレビ中継を通して鐘の音を聞いた人も多いだろう。知恩院の鐘は、同じ東山区にある方広寺、そして奈良の東大寺と並んで日本三大名鐘のひとつに数えられる。高さ3.3メートル、直径2.2メートル、重さは約70トン。最近、訪ねた方広寺の鐘もかなりの大きさだったが、知恩院の鐘も負けてはいない。

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知恩院

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除夜の鐘で知られる、知恩院の鐘

大晦日には、僧の一人が親綱を持って仰向けにぶら下がるようにして撞く。16人の僧が子綱を握って「えーい、ひとつ」などの掛け声で一打、一打、撞いていく。その間、僧侶たちの念仏礼拝の声がこだまし、境内は清浄で荘厳な雰囲気に包まれる。

「除夜」とは、旧年を除く夜、つまりは古い年を除き去り、新しい年を迎えるという意味らしい。人には108の煩悩があるとされ、その煩悩を払い除けるため、大晦日の夜には108回の鐘をついて、災いを拭い、福を招く。

108というのは、人間の過去・現在・未来に渡り持っている煩悩の数だといわれているが、諸説あるようだ。その煩悩を払ってくれる除夜の鐘、もとは鬼門封じの意味があったという。鬼門とは、北東の方角を指す。鬼門=丑寅とも言うが、一年のうち12月は丑、1月は寅にあたり、この丑寅の鬼門に、鬼が侵入するのを防ぐために、鐘を突いたといわれる。昔から笛や鉦や太鼓など、音の出るものは鬼や魔を払うと信じられてきた。鐘もまた、同じ要素を含んでいると思われる。

さて、この除夜の鐘で知られる知恩院には、七不思議伝説が残る。国宝の御影堂には、その一つに数えられる「忘れ傘」がある。江戸時代の名工・左甚五郎が魔除けのために置いていったという説や、白狐が霊巌上人に棲み家を頼み、その代わりに寺を守護する傘を置いていったとも伝わる。雨の日にさす傘は、火災除けだとされる。この御影堂には他にも河童や蝉、亀など「水」をイメージさせる落とし金が施されているが、ちょうど今、御影堂は大修理中でこれらを見ることができない。竣工予定の2019年が待たれるところだ。

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大修理中の御影堂

ただし、七不思議の一つ「瓜生石」は黒門手前の路上の一角にあり、見ることができる。誰も植えた覚えがないのに瓜のつるが伸び、花が咲いて瓜が成ったとか、八坂神社の牛頭天王が瓜生山に降臨した後、再びこの石に現れ、一夜のうちに瓜が生え実ったとか。この石は隕石という説もある。

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知恩院の七不思議のひとつ、瓜生石

ところで最近、除夜の鐘について、少し残念な話を耳にした。全国的に、除夜の鐘の音に対して、近隣の住民から「うるさい!」という声があるというのだ。

毎年、除夜の鐘の音を聞くと、過ぎ去ってしまう一年へ名残惜しいような、なんともせつない気持ちを抱きつつ、新しく迎える年への期待が交じり合い、神妙な心持になる。最近は心に染みる鐘の音を雑音としか思えない人がいるのだな、と正直、驚いてしまった。まあ、年越しの思いは人それぞれ、ということか。こちらは、日本の風物詩を堪能しながら、心のゆとりを持って新しい年を迎えたい、と思う。

 

京都の摩訶異探訪とは

京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。

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