「源氏香の世界」と「現代京都画壇による源氏物語絵」展
江戸初期の文芸復興で源氏物語が再評価される中、香道の世界でも「源氏香」というすぐれた組香(競技形式で香木の香りを聞き分ける式法)が考案されました。その答を表した図形「源氏香の図」は今日でも古典文様として知られ、やきものや漆工芸、染織、錦絵、和菓子など、さまざまな分野で用いられています。
本展では、さらに現代京都画壇の作家54人による源氏物語の世界に取り組んだ作品群を一堂に展示します。これらは、平成3年に京都文化博物館にて完成記念の披露をされたもので、平成20年の源氏物語千年紀にちなみ、このたびあらためて紹介するものです。上村松篁「蛍」、小松均「若紫」、秋野不矩「浮舟」など、重鎮から若手まで京都画壇の名だたる日本画家が、各々の作品と、各帖への思いを綴った文章も紹介します。
源氏物語とゆかりの深い「香り」にまつわるデザインの世界をお楽しみください。
<常設展>「源氏香の世界」と「現代京都画壇による源氏物語絵」展
会期/6月17日(火曜日)~7月27日(日曜日)、月曜日休館(祝日の時はその翌日)
場所/京都文化博物館
入場料/一般500円、大高生400円、中小生300円
明治41年、静岡県に生まれた秋野不矩氏は、一度は教職につくも、昭和2年に石井林響氏に師事、また昭和4年には京都で西山翠嶂の「青甲社」に入り、日本画を学びました。昭和6年の帝展で初入選の後も新文展、日展で活躍を続けますが、昭和23年には上村松篁、広田多津らと日展を離れ、新しい日本画を摸索しようと「創造美術」の結成に参加します。その後、京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)で後進の育成に尽力しますが、昭和37年に客員教授として訪れたインドでの体験に大きな影響を受け、独自の作風を確立していきます。生命感の溢れるスケールの大きな作風を、平成13年に93歳で亡くなるまで展開されました。
浮舟は源氏物語の五十一番目のお話で、薫、匂宮、浮舟が主な登場人物です。薫が宇治に囲っていた美女(浮舟)に思いを募らせた匂宮は、薫を装って強引に思いを遂げてしまいますが、浮舟も匂宮の情熱ぶりに次第に心惹かれていきます。再び冬の宇治を訪れた匂宮が、宇治川の対岸にある隠れ家に浮舟を連れだそうと小舟で渡る場面はとくに有名です。川の小島に見える常磐木の緑のように変わらぬ思いを歌にしておくりますが、浮舟は、「たちばなの小島はいろも変わらじを この浮舟ぞゆくへ知られぬ」と、常磐木の緑はかわらずとも、わたしはこの浮舟のようにどうなりますことやらと返しています。この後も浮舟は薫と匂宮との板挟みとなって悩み、やがて死を決意していきます。秋野不矩氏の作品「浮舟」では、夜空に月が浮かび水面も明るく描かれ、二人は仲むつまじく舟上で寄り添っています。しかし、その情愛の世界とは裏腹に舟のむこうは闇にかき消されており、ゆらゆら進む小舟の行く先は・・・と、考えさせられます。まるで浮舟の心象風景のように・・。
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